News

新着情報

教育学術新聞に東日本国際大学の危機管理体制が掲載されました

2022.10.07

教育学術新聞 2022年(令和4年)9月28日(水曜日)第2898号に草野幸雄法人事務局長が本学の危機管理体制について取材を受けられました。

教育学術新聞では現在、各大学の危機管理体制を連載しています。

 

 

掲載された記事の内容を紹介いたします。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

ピンチの中にチャンスあり

 

東日本国際大学の危機管理体制 “徳ある職員“を育成

福島いわき市に立地する東日本国際大学(中山哲志学長、経営経済学部、健康福祉学部)は、福島第一原子力発電所に一番近い大学である。2011年の東日本大震災以来、地震、津波、原発事故、風評被害の4重苦に地域とともに悩まされてきた。しかし、危機こそチャンスと緑川浩司理事長は述べる。同大学の危機管理体制について、草野幸雄法人局長に聞いた。

 

 

草野法人局長に聞く

 

○令和元年東日本台風の経験

 

2019年10月12日、本州に上陸した令和元年東日本台風(台風19号)は、13日にかけて主に関東から東北にかけて甚大な被害をもたらした。いわき市では、街中を流れる夏井川などが氾濫。流域の家屋では

床上・床下浸水し、地域住民は避難を余儀なくされた。多大な被害を受けた同大学も14日に危機対策本部を設置、被害状況の情報などを収集して協議し対応に当たった。

一方で「被災した家屋の復旧に、強化指定部(運動部)の学生は自主的に泥カキなどの作業を行いました。地域の方々からたいへん喜んでいただき12月にはこれを機に法人直轄のボランティアセンターを立ち上げ、 災害時に機動力を持って地域の要請に応える部署を設置しました。2021年3月には福島県防災士会と協定を結び、 池域の防災・減災を担い、 学内での防災教育、 防災士養成も行なっています」と草野局長は述べる。

 

学校法人昌平黌危機管理規程によれば、 危機とは 「火災、 災害、 テロ、重篤な感染症等の発生その他の重大な事件又は事故により、 学生などの生命若しくは身体の安全又は法人の組織、 財産若しくは名誉に重大な被害が発生し、 又は発生する恐れのある緊急の事象及び状態」と定羨される。 理事長は、危機事象の対処のため、「(危機)対策本部」を設躊する。 規程が作成された2010年から何らかの「対策本部」が設置されたのは 3回。 東日本大震災、 先述の台風、そして、コロナ褐である。

 

東日本大震災でのいわき市・浜通りは、 震災、原発事故とその風評被害に苦しみ、 現在でもその影響は続いている。「本学は、 特に(当時の)一号館の半壊を中心に建物倒壊の危機がありました。理事長のリー ダー シップのもと、 東日本大震災対策本部 (危機対策本部)を立ち上げ、クライシスマネジメントを発揮して、教職一丸となって主にハー ド面でのいち早い復旧・復興に努めました」。震災直後は、多くの昭学生が帰国してしまったが、大学の献身的な支援の結果、1年後にはほぼすべての留学生が戻ってきた。

 

コロナ禍では「新型コロナウイルス感染症対策本部」が立ち上がり、合わせて、理事長や総長(全設置校の教学を統括)、大学、短大、附属中学高校・幼塾園のトップ、部局長等がメンバーとなる「新型コロナウイルス感染症対策拡大幹事会(対策本部長:大学学長)」が設置された。これは、月に1回開催され、各学校と全部局の状況が報告されるとともに、重要事項については学園の経営陣が今後の方針などを打ち出す。それらは全て報告書にして、「法人事移部門対策協議会」という部課員等が集まる会議体で報告され、法人全体に共有される。

こうして規程に基づき つつも、 危機の種類や状況に応じて臨機応変に最適な体制を整えている。

「理事長、 総長、 学長、法人事務局長・総務部、大学事務局長・学生部が中心となり日ごろから相談や情報を共有しています。 したがって、 危機発生時には上がってきた事実や情報を基に、 速やか上雇部が 先頭に立ち機管理体制に移行できる状況になっています」。

 

 

〇緊急連絡網によって迅速かつ正確に対応

日常的な事件や事故にはどう対応するのか。「学生のことは学生部、教職員のことは総務部が対応します。トラブルが発生すると、迅速に正確な情報を収集して部門長に報告します。部門長は事の大きさによって、大学事務局長、法人の事務局長・総移部と相談して対応策を決定します。最終的には理事長にまで報告します」。危機管理マニュアルは、不審者侵入時の対応、授業・課外活動時の事故対応、事件等発生時の対応、個人情報漏洩発生時の対応など、細かい想定のもとにフローチャート図が作成されている。また、整備してある緊急連絡網によって、 法人事務局・大学事務局と各学校・全部局が能動的、一体的に動き、現場の情報がトップに迅速かつ正確に伝わる仕組みがあるといえる。

 

 

マニュアル、ガイドライン等は、草野局長、中村隆行大学事務局長を中心に法人の総務部や大学の学生部等で作成され、対策本部で了承される。このため、細かいチャートの改訂や、例えばコロナ禍の注意喚起なども頻繁に行われている。なお、通常時の危機管理に係る情報収集、備品管理、避難訓練は法人総務部を中心に行われる。

 

マニュアルの徹底順守は、「コンプライアンス指針」で担保される。同指針には、①トップ・上層部に情報(特に悪情報)が速やかに入ること、②トップ・上雇部の適切かつ迅速な判断、③迅速・的確な対応策の実現、という対応のあり方が示されている。「危機管理に限らず、法人の規程で守るべき指針が示されています。規程を順守することは、本学に対する信用確保や風評被害の末然防止、しいては本学のブランド向上にもつながります」。

 

 

 

○「天 徳を予(われ)に生ぜり」

 

東日本大震災、原発事故を経験しているので、法人全体で重大な危機や自然災害、感染症には常日頃からの危機意識の心構えができている、と草野局長は指摘する。縁川理事長は、ことあるごとに「ピンチの中にしかチャンスはない」と述べるというが、緑川理事長の次の言葉に法人の危機管理の方針と対応が凝縮されているといえよう。

 

『震災の時、徐(そ)坰(キョン)遙(ヨ)前本学儒学文化研究所長(韓国成均館大学名誉教授・故人)が、建学の精神である儒学の 「論語」の一説「天 徳を予(われ)に生ぜり」を引いて、私たちに「震災は学校法人昌平黌に徳を生じさせた」と話されました。私はこの教えを「こういう時にこそ教職員は思いやりの気持ちをもって行動していかなければならない」と解しました。

 

 

私はこの一説を肝に銘じ、震災対策にあたり、今もその気持ちに変わりありません。

 

まさに震災は私たちに与えた大きな試練ですが、震災というピンチを、「建学の精神の深化」と「地域責献の実 践」によって克眼し、真の復興・再生を実現しているのです。

 

震災という苦難を潜り抜けることによって文字通り新しく生まれ変わる。学生募集や就職、教育・研究体制、 地域連携や地域貢献、海外交流が充実・発展し、これは震災という危機がなければ成し遂げられなかったことです』。

 

先述の通り、台風時には学生が復旧ボランティアに汗をかいた。コロナ褐では、教職員の自主運営でワクチン大学拠点接種(職域接種)を実施し、同大学学生・教職員をはじめ、地域貢献として附属幼稚園保護者、福島高専学生・教職員、市内の専門学校生、地域住民にも広く開放し、希望者への接種を進めた。これも事務局の発案に対して理事長が「しっかりとシステムや体制を整えて実施しましょう」と決断したのだった。

 

 

東日本大震災・原発事故からの復興創生については、2021年4月に「福島浜通りトライデック」を立ち上げた。このモデルとしたアメリカ・ハンフォー(放射能汚染地区から米国有数の繁栄エリアに発展)に視察に行き、産学官民が連携して、差業振興、人材育成、環境回復等、地元に実利をもたらす枠組みを構築し実践していくこととした。まさに数々の「危機」が同大学の潜在力を引き出し、地域との共創を深化させているのである。

 

 

 

○危機意識は 「徳ある職員」の育成に

 

「危機対策の基本姿勢は、学生の安心安全の確保です。コロナでもそうでしたが、あらゆる危機管理はこれに集約されると思います。情報を正確につかんで、マニュアルでどう対応するか。スピー ドが求められる場合には、臨機応変に一足飛びに法人事務局長から理事長にまで報告するなどの機転が、本学職員にはあると思います。こうした意識の高い職員を一人でも多く、いかに育成するかが重要だと思います」と草野局長は語る。危機意識の高い職員、論語風に言えば「徳ある職員」の育成こそが本質的な危機管理と言えるかもしれない。

 

 

「各自が当事者として各自の問題意識を持つことが望ましいです。 新入職員には研修はしていますが、本質的な解決策にはまだ努力の積み重ねが必要で抜本策にまでは至っていませんね」と笑うが、まさに全ての大学の課題でもあるのではないだろうか。

 

立て続けに災害(クライシス)に巻き込まれ、そのたびに力強く立ち上がってきた。ピンチをチャンスに転じてきた東日本国際大学は、現場の途切れない危機意識のもと学生募集も順調なのだという。まさに「危機に弾い大学」である。

 

教育学術新聞 記事

検索フォーム
カテゴリー
最近の投稿
アーカイブ