Library&Laboratory
図書館・研究所健康社会戦略研究所
所長紹介
所長挨拶
健康社会戦略研究所 所長
石井正三「健康社会戦略研究所のめざすもの」
本格的高齢社会を迎えて、生きるために何が大切なのかは一層切実なテーマになっています。若い世代の湧き上がるようなパワー、中堅層のスキルを伴った行動力、老年を迎えるまでに培った人脈やさまざまな知恵がうまくかみ合えば、驚くほどのパワーを手にすることができます。また、地域社会の活力は担い手である市民のエネルギーが必要ですが、さらに行政とも方向が一致することが一層の活力をつくりだします。
震災からの復興はまさに失われた命や街の財産、そして多くの傷ついたインフラを取り戻すというマイナスからのスタートになるわけです。東日本大震災に遭遇したわたしたちの地域では、世界中から多くの方々の関心や応援をいただきました。1,000年に一回規模の大きな地震・津波や原発事故に加えて風評被害という、人類が経験したことのない災害に見舞われた私たちは、不幸にも命を落とした方々の思いも引き継ぎながら、懸命に走り続けてきました。震災を経験したからこそ、次にやってくる災害にも対応力を高めたまちづくりが必要です。大震災の被害は、先駆けて高齢社会に突入していた地区で大きかった傾向があり、いわきでもその中で努力を重ねてきたおかげで、復興への努力が結果として目に見えるようになってきました。 子供たちの姿も目に見えて多くなり、生徒数の増加で対応が大変になった学校の話題なども聴こえてくる一方で、高齢者が1人でまたは夫婦2人で孤立化し生活維持が困難になったり、夫婦共稼ぎで頑張って同居している中で高齢者の在宅ケアに困難を感じている世帯の声も届きます。欧米先進国と比べて日本の高齢化社会へのスピードが早いと言われますが、特に被災地では社会の中で組み替えが進んだために、問題点が顕在化してからもその進行が早く、対応は既に待ったなしです。 この変化の方向性が、現在首都圏をはじめとした都市部でも同時進行中なのです。原発の鎮静化のプロセスにおいていわきが最前線の防波堤であり、同様に私たちの地域が現在の大震災を契機とした社会的変化に対応できるのならば、人口比で100倍を超える首都圏の高齢社会問題でも応用可能な手がかりを得ることができます。
「健康」とは、WHO憲章などで「ただ疾病や傷害がないだけでなく,肉体的,精神的ならびに社会的に完全に快適な状態であること」と定義されています。先進国の現状からもう少し検証すると、疾病があっても服薬治療などによって、生命体として定常状態homeostasisを守ることができている状態、に重きをおく考え方が提唱されています。「薬を1つも飲まずに元気であること」や「病名が1つもない状態」というような単純な定義ではカバーしきれない様々な事象が、医療の進歩と社会の高齢化によって出てきたからです。生命体とは狭い意味では各個人そのものでありますが、人間は社会的動物であるために、1人では実現できない医療や介護そして健康を守る制度や人のネットワークなどを作り上げてきました。経済的な活動でさえ、これらのシステムのお陰で円滑に活動することができるわけで、先進国と呼ばれる社会は、方法論に多少の差があっても日本国憲法にある「健康で文化的生活」を欠かせない目標としてきました。 震災を経て失われなかった命を守り、一緒に耐えしのいだ健康を維持するためには、自己責任論や個人的な健康の追求といったエゴイズムに委ねる政策だけでなく、健康を取り戻すことができるような仕組みづくりが必要なのです。世界の視点による国際保健global healthから地域保健である地域医療community healthというパラダイムの中で、健康社会healthy societyを追求する方法論をご一緒に見つけて具現化していきたい、と考えています。
震災からの復興はまさに失われた命や街の財産、そして多くの傷ついたインフラを取り戻すというマイナスからのスタートになるわけです。東日本大震災に遭遇したわたしたちの地域では、世界中から多くの方々の関心や応援をいただきました。1,000年に一回規模の大きな地震・津波や原発事故に加えて風評被害という、人類が経験したことのない災害に見舞われた私たちは、不幸にも命を落とした方々の思いも引き継ぎながら、懸命に走り続けてきました。震災を経験したからこそ、次にやってくる災害にも対応力を高めたまちづくりが必要です。大震災の被害は、先駆けて高齢社会に突入していた地区で大きかった傾向があり、いわきでもその中で努力を重ねてきたおかげで、復興への努力が結果として目に見えるようになってきました。 子供たちの姿も目に見えて多くなり、生徒数の増加で対応が大変になった学校の話題なども聴こえてくる一方で、高齢者が1人でまたは夫婦2人で孤立化し生活維持が困難になったり、夫婦共稼ぎで頑張って同居している中で高齢者の在宅ケアに困難を感じている世帯の声も届きます。欧米先進国と比べて日本の高齢化社会へのスピードが早いと言われますが、特に被災地では社会の中で組み替えが進んだために、問題点が顕在化してからもその進行が早く、対応は既に待ったなしです。 この変化の方向性が、現在首都圏をはじめとした都市部でも同時進行中なのです。原発の鎮静化のプロセスにおいていわきが最前線の防波堤であり、同様に私たちの地域が現在の大震災を契機とした社会的変化に対応できるのならば、人口比で100倍を超える首都圏の高齢社会問題でも応用可能な手がかりを得ることができます。
「健康」とは、WHO憲章などで「ただ疾病や傷害がないだけでなく,肉体的,精神的ならびに社会的に完全に快適な状態であること」と定義されています。先進国の現状からもう少し検証すると、疾病があっても服薬治療などによって、生命体として定常状態homeostasisを守ることができている状態、に重きをおく考え方が提唱されています。「薬を1つも飲まずに元気であること」や「病名が1つもない状態」というような単純な定義ではカバーしきれない様々な事象が、医療の進歩と社会の高齢化によって出てきたからです。生命体とは狭い意味では各個人そのものでありますが、人間は社会的動物であるために、1人では実現できない医療や介護そして健康を守る制度や人のネットワークなどを作り上げてきました。経済的な活動でさえ、これらのシステムのお陰で円滑に活動することができるわけで、先進国と呼ばれる社会は、方法論に多少の差があっても日本国憲法にある「健康で文化的生活」を欠かせない目標としてきました。 震災を経て失われなかった命を守り、一緒に耐えしのいだ健康を維持するためには、自己責任論や個人的な健康の追求といったエゴイズムに委ねる政策だけでなく、健康を取り戻すことができるような仕組みづくりが必要なのです。世界の視点による国際保健global healthから地域保健である地域医療community healthというパラダイムの中で、健康社会healthy societyを追求する方法論をご一緒に見つけて具現化していきたい、と考えています。
石井 正三(いしい まさみ)健康社会戦略研究所所長
- 取得学位
- 博士(医学)
- 出身
- 弘前大学大学院 医学研究科
- 略 歴
-
1980~1982年 弘前大学附属病院脳神経外科助手
1982~1985年 いわき市立総合磐城共立病院脳神経外科医長
1985年3月 石井脳神経外科眼科医院開設
1986年3月 石井脳神経外科眼科病院開設
1990年~現在 医療法人社団正風会 石井脳神経外科・眼科病院開設 理事長就任
2001年9月 同 介護老人保健施設いきがい村開設
2003年3月 同 石井正記念石井医院開設
2004年9月 社会福祉法人正風会 ケアハウス小名浜開設 理事長就任
2006年4月 医療法人社団&社会福祉法人 理事長専任
2017~2018年 一般社団法人 医療戦略研究所 所長就任
2018年~現在 地域医療連携推進法人 医療戦略研究所 代表理事就任
1998~2000年 いわき市医師会理事長
2000~2002年 いわき市医師会副会長
2002~2007年 いわき市医師会会長
2002~2008年 福島県医師会副会長
2002~2006年 日本医師会代議員
2006~2016年 日本医師会常任理事
2007~2016年 世界医師会理事
2009~2015年 世界医師会副議長
2015~2016年 世界医師会財務担当役員
2016年~現在 長崎大学客員教授 - 受賞歴
-
2013年10月 ハーバード大学公衆衛生大学院国際保健武見プログラム
「名誉武見フェロー」拝受
2013年11月 藍綬褒章受章
2016年11月 日本医師会最高優功賞受賞
2018年3月 総務大臣感謝状拝受