本学サッカー部の高田豊治総監督が、朝日新聞「プロメテウスの罠」に取り上げられました。
「プロメテウスの罠」1574 6回目の春・6 「Jヴィレッジ」その後
「さあ、今日はどんなことに注意する?」
今月2日、福島県いわき市。
東日本国際大サッカー部総監督の高田豊治(68)は、自分を取り囲んだ選手たちに、練習試合のポイントを問いかけていた。チームは東北地区大学サッカーリーグの2部に所属する。その1部昇格が今の目標だが、高田は3年前までは異なる場所に身を置いていた。
楢葉町と広野町にまたがるサッカー練習施設Jヴィレッジ。そこの副社長として事実上の経営トップに就いていた。Jヴィレッジは東京電力が福島県に寄贈して1997年に開業。原発増設の見返りと言われてきた。
日本サッカー協会は、ここをナショナル・トレーニングセンターと位置づけてきた。だが、福島第一原発から20キロにあり、事故後、対応拠点として東電に貸し出され、サッカー施設の機能を失った。
それでも高田は仮設住宅での健康づくりなどを手がけ、職員の雇用を守り、運営会社を存続させてきた。
「計11年間かかわったJヴィレッジの復活を近くで見届けたい」
広島県出身で、Jリーグ・サンフレッチェ広島のGMも経験したが、2013年6月のJヴィレッジ退職後も、いわき市に残った。
15年1月、福島県が再整備計画をたてた。18年夏に一部営業を再開、19年4月の全面再開が目標だ。20年東京五輪に向けたサッカー日本代表の強化拠点とすることも決まった。
だが、高田はきっぱりと語る。
「代表が使うことはJヴィレッジの復活にプラスにはなる。でも、大きな期待をかけるべきではない」
まず福島県の人に使ってもらうことが大切だと考える。
「それが全国のサッカー愛好者に『Jヴィレッジは大丈夫』と見てもらえる近道だ」
高田の存在が知られ、大学チームの層は厚くなっている。今年度は部員15人で戦ったが、4月から約30人に。新入生には、年末年始の全国高校選手権に出場した選手もいる。
「ずっと、いわき市にいよう」
高田はそう決めている。副社長を務めていた97年の立ち上げた時、Jヴィレッジでは地元の中学生を対象にサッカー教室を開いていた。当時の子どもたちが今、この地域のサッカーを支える人材に育っている。
かけがえのないつながりがあるこの地で、復活を見守っていくのだ。
以上、 朝日新聞2016年3月26日(土)「プロメテウスの罠」から引用。